2024/02/11 16:56
Heartleyカルチャーブログ、第一弾! 初回は何の話をしよう…と力む前にまずは書こう!ということで、最近見た北欧の映画『枯れ葉』をご紹介します。 皆さんは、北欧と聞いてどんなイメージが湧きますか? 『枯れ葉』を私なりに解釈すると、”心の豊かさを大切にする”という北欧らしい精神に満ちた、素晴らしい作品だったと思います。 映画の感想、ちょっとした小ネタ、更には北欧デザインとのつながりなんかを話してみますね。 https://youtu.be/eYpgp6ZPGQQ?si=Q7ALwwjmxZu5nOtu アキ・カウリスマキ監督『枯れ葉』予告編 © Sputnik Photo: Malla Hukkanen 北欧フィンランドを代表する映画監督、アキ・カウリスマキの最新作であり、6年前の引退宣言を覆した復帰作でもある『枯れ葉』。 ヘルシンキを舞台にしたラブストーリーです。 ある夜出会い、言葉も交わさぬままなんとなく惹かれ合った2人の男女。 女性はスーパーマーケットで働くアンサ、男性は工場現場で働くホラッパ。 2人は偶然再会を果たし距離を縮めながらも、すれ違いを繰り返してしまう…そんな恋愛模様が描かれた映画です。 さて、このラブストーリーですが、2人は決して若くないんですね(そこがいい)。 そして、生活は苦しい。 アンサは理不尽に仕事を解雇されてしまうし、ホラッパもホラッパで、アルコール中毒ながらもなんとか働いているギリギリな状況。 2人の生活環境だけでなく、ラジオから流れるウクライナ侵攻のニュースからも、社会の厳しい現実というものがひしひしと伝わってきます。 でも同時に、優しい世界がそっと顔を見せてくれるのです。 2人が静かにお互いを受け入れていく幸せも、日常の些細な喜びも、華やかとは言えないけれど温かい。 それは、例えば無表情な顔がほころぶ瞬間に、少ない会話でも通じ合える心のつながりに、瞬時に協力しあえる人々の思いやりに、歌や犬といった愛おしい存在に、じんわりと滲み出ています。 これ以上はネタバレ防止のためやめておきますが、冷たい空気感の中に、そっと琴線に触れる温もりがある感じ。 その哀愁漂う美しさが本当に素敵で、見終わった後も思い出している今も、私の心に灯をともしてくれています。 引用元:映画.com https://eiga.com/movie/99293/gallery/ © Sputnik Photo: Malla Hukkanen 労働者の素朴な暮らしが描かれている『枯れ葉』ですが、そこにほんのりと彩りを加えている音楽や犬がとても印象的でした。 音楽は全体を通して素晴らしいのですが、特に、ぶっきらぼうな女性2人組が演奏するワンシーンが最高に良くて。 MAUSTETYTÖT(マウステテュトット)という実際に活動しているシンセポップデュオで、監督自身も大ファンだと公言しています。 劇中で披露している楽曲は「Syntynyt suruun ja puettu pettymyksin(悲しみに生まれ、失望を見にまとう)」。 音源も載せておきますね。(でも映画の表情込み・日本語訳ありで見てほしいー!!笑) APPLE MUSIC Spotify https://open.spotify.com/track/3MST6myDUVA6tzowlQ58I4?si=MwTzWOB0SiCTfWRDXj2xbA そして犬は、孤独を感じていたアンサが偶然迎え入れ”チャップリン”と名付けた、重要な登場人物。 なんて優しくてお利口なのだろう…とキュンキュンしてしまったこの犬様ですが、監督の愛犬なのだそうです。 アキ・カウリスマキの過去作にも犬がしばしば登場していて、犬好きとしても知られているみたいですね。 (ちなみにいくつかの過去作は、Amazon Primeの見放題にありましたよ!) 監督はカルッキラという街で、サウナやレストランも併設されている映画館「キノ・ライカ」を経営していますが、”世界で一番犬に優しい映画館”を自負しています。 この映画館も本作のロケ地として使われていて、劇中で登場する鋳造所も映画館の隣に実存する工場。 カルッキラは工場が中心となっている昔ながらの産業の街で、”皆が助け合いながら暮らす文化”、”お金だけでなく物事への取組を大切にする精神”があるのだそうです。 このような文化や精神は、『枯れ葉』にも色濃く反映されているように感じます。 そして、世界中で愛される北欧デザインとのつながりも見出せるので、最後にその話をしますね。 引用元:映画.com https://eiga.com/movie/99293/gallery/ © Sputnik Photo: Malla Hukkanen 北欧はもともと貧しい国なので、物質的な豊かさよりも、心の豊かさを大切にする傾向があるそうです。 フィンランドの教育は世界一だと言われますが、教育熱心な文化背景にも、”物質的な資源がないから、人的資源で世の中を動かしていかなければ!”という精神があったのだと思います。 さらに、冬は寒さが厳しく、日照時間もとても短い。 室内で過ごす時間が長い分、日常生活に対する感度が高まっていって、上質なデザインが発達していったのだと言われています。 室内を美しく見せるような色合いだったり、温かみのある素材感だったり、派手ではないけれど品が良くて長く使えるデザインだったり。 なるほど、確かに『枯れ葉』のアンサの部屋も、スーパーやカフェなど街のちょっとした場所も、素敵な色づかいが印象的です。 映画全体を通して一貫されているのは、明るくはないけれど美しい色彩・レトロな質感(ちなみに時間軸は現代ですが、スマホもほとんど出てこない)。 そんな画面を構成する風景にも、労働者の質素で懸命な生活にも、2人の日常や恋愛模様を通して感じられる温かな感情にも、作品の至るところに北欧らしさが詰まっているように感じました。 まだ映画を見ていないよっていう方! この北欧文化という背景を考えながら映画を見てみると、より一層楽しんでいただけるかもしれませんよ。 最後に、Heartleyでも最近初めて北欧雑貨を入荷したのでご紹介! うんうん、優しい佇まい、綺麗な色合い。 雑貨にも現れている北欧らしさ、やっぱり素敵… 奥深い北欧の世界、また機会があったら触れてみたいと思います。 はー、サクッと読めるコンテンツを目指そうと思っているのですが、あれもこれもと欲張ってボリューミーになってしまいました…笑 興味を持ってくださった方がいらっしゃったら、とても嬉しいです。 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。 また次回もお楽しみに。 Heartley店主 Kanakoアキ・カウリスマキ監督作品 映画『枯れ葉』(原題:Kuolleet lehdet)- 感想
映画を彩る音楽や愛くるしい犬
北欧の文化とインテリアデザイン
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