2026/02/08 17:54
雪が降る日は、世界が少しだけゆっくりと動く気がする。
色や音が薄まって、白に包まれていく感覚。
東京で久しぶりの雪景色を眺めながらそんなことを思っていたら、なんだか心まで静かになって。
本当に久しぶりのカルチャーブログですが、そんな今日、ふと思い出した本があったので、ここで紹介してみようと思います。

ハン・ガン『すべての、白いものたちの』
2024年、アジア人女性として初のノーベル文学賞を受賞したことでも話題となった、韓国人作家のハン・ガン。
2018年に日本語版が刊行された『すべての、白いものたちの』は、彼女の代表作のひとつとして知られています。
おくるみ、しお、ゆき、つき、しろいとり……
65にも及ぶ「白」が三章の中に並べられ、物語というよりも詩のように、美しい言葉が静かに紡がれていく本作。
原題の『흰』は、日本語に直訳すると「白い」という意味です。
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私の母国語で白い色を表す言葉に、「ハヤン」と「ヒン」がある。綿あめのようにひたすら清潔な白「ハヤン」とは違い、「ヒン」は、生と死の寂しさをこもごもたたえた色である。私が書きたかったのは「ヒン」についての本だった。
(ハン・ガン『すべての、白いものたちの』「作家の言葉」より引用)
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生後二時間で亡くなった姉、第二次大戦の後に再建されたワルシャワの都市、朝鮮半島の記憶。
白いものに、痛みや記憶、そして「生」そのものを、そっと重ねていく。
静粛で儚く、それでいて切実な言葉たちは、祈りのように胸に響いてきます。
文庫版には、訳者の斎藤真理子さんによる補足が付されています。
そこで三章の構成の意味を知り、私は本書をもう一度、最初から読み返しました。
各章がどのような視点で語られているのかが明確になることで、初読のときとは大きく異なる印象を抱くことになるのです。
この独特な読書体験という意味でも、忘れられない一冊となっています。
やさしく、でも強く、心に残り続けるもの。
何気ない日常の中でふと心を整えたくなったとき、この本は静かに寄り添ってくれると思います。
暖かな気候が待ち遠しい季節、皆さまが健やかに過ごせますように。
Heartley店主 Kanako

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