最近なぜか、訪れた展示や読んだインタビュー、聞いたお話など、色々な場所で同じテーマに出会っています。
そして気が付けば、そのことについて考える時間が増えていました。
今回は、そんなテーマについて書いてみようと思います。
自分から離れられる瞬間
遠藤文香 <Pneuma>
少し前に、写真家の遠藤文香さんのトークイベントを聞きに行きました。
トークの内容からも作品自体からも、感性や身体感覚のようなものを大切にされる姿勢が滲み出ていて。
心の中で大きく頷きながら、また、同時に強く惹かれながら、お話を聞いていました。
そして、特に印象に残ったのが、「写真を撮る瞬間は、自分から離れられる瞬間。幸せな瞬間。」といったお話をされていたことです。
Don’t think. Feel.
吉野英理香 <NEROLI>
先日訪れた東京都写真美術館の「TOPコレクション Don’t think. Feel.」展でも、どこか通じるものを感じました。
AI時代における”感触”をテーマに、収蔵作品が紹介されたこの展覧会。
作品を見ながら、タイトルでもある「考えるな、感じろ。」という言葉が、すっと胸に溶け込む感覚がありました。
私にとって、アートに触れる時間はかけがえのない時間ですが、ふと思い返してみると、いつもあまり「考えていない」のです。
頭で考えようとする前に、
美しい。
儚い。
苦しい。
なんだか分からないけれど惹かれる。
そういった、うまく言葉にできない感覚が必ず先にあります。
そして、そうした時間の中では、生活や仕事のこと、人間関係も自分自身のことさえも、頭に浮かばない気がします。
作品の前にいる間だけは、いつもの自分から解放されて、ただ作品と向き合うことだけが残る。
もちろん、すべての作品がそうではありません。
けれど時折、ただ見ているだけで、頭ではなく心がほどけていくような作品に出会うことがあります。
私にとって美術館は、そんな感覚に触れられる場所なのかもしれません。
美術館とヴィンテージの共通点
北代省三 展示風景
そしてこれは、ヴィンテージが好きな理由、ヴィンテージを選ぶ感覚と、少し似ているのかもしれないと思いました。
インテリア雑貨という特性上、「空間にどんな風に作用するのか」を言葉にすることも多いですが、実際にはその前の段階があります。
理屈では分からないけれど、視線を預けたくなる、そばに置きたくなる、触れたくなる。
アートもヴィンテージも、その背景やストーリーを知ることで、面白さが増すこともあります。
でも、理由を考える前に心が動くこともある。
そして、その感覚に没頭している間は、自分の中の雑音が静かになり、考え続ける日常から少しだけ距離を置ける時間でもあります。
情報が溢れる世の中で、無意識のうちに何かを考えてしまう日々。
だからこそ、考えずに感じられる瞬間や、心が喜ぶきっかけを、これからも大切にしていきたいと思うのです。
川内倫子 <Illuminance>
ご紹介したTOPの展覧会は6月21日まで。
個人的には川内倫子さんの作品が大好きなので、映像作品の前でつい長居してしまいました。
会期終了まで残り僅かですが、ご興味のある方はぜひ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
Heartley店主 Kanako